ブログをどう使うかは考え中

 なにかのきっかけとして軽い気持ちで始めたブログですが、トピックを決めてできるだけ頻繁に更新していった方が良いんでしょうが、まったくそんなことを継続する自信はありません。Twitterですら毎日ツイートなんてしてないのに。

 ただ、いまはまだ作ったときの勢いが残っているので、今日はなにかひとつ、書くことを決めて書いていきたいと思います。…とか書いているうちに、ひとつトピックを思いつきました。

 

 ブログでもTwitterでもFacebookでも、なにかをインターネットで発信するときには「事実」に気をつかう必要があると、一般的に認識されていますよね。私は何の気なしに「このブログでは“事実”ではないことを書かないように気を付けなければならない」と書こうとしていました。今回はこのやっかいな問題、“事実”について考えていきたいと思います。

 事実っていったいなんでしょうか。ひとつためしに考えてみるなら例えば「世界についての正しい記述」とでもなるのでしょうか。しかし、この一見簡単なことが難しい。どうすれば正しい記述が可能になるのか。「記述が正しい」っていったいなんでしょう。あるいはそもそも、前提となっている不可分な一つの世界の実在は確かなのでしょうか。よく知られていることなので改めて書くのもちょっと気恥ずかしいのですが、いまから40年くらいまえ、1970年代くらいに、この「記述の“まえ”に存在する世界」そのものの実在性を疑問に附すムーブメントが起こりました。このブームのことを認識論的構築主義と表現することがあります。このブームは、一般的には私たちが「世界」として把握しているものは解釈の産物であるという主張を繰り出していきました。このブームに乗っかる人はかなり多く、その結果、私たちが知っているのは、世界そのものではなく、世界についての物語群であるということがかなり広く信じられるようになったようなのです(信じられている、と書いたことからわかるかもしれませんが、私自身はあまりこのブームに乗っかる気はありません)。

 このブームの結果なにが起こったか。「事実」について語ろうとすると「そんなのは嘘っぱちで、イデオロギーの産物だ!事実なんてない、そこには解釈があるだけ、物語があるだけだ!」と言う人(こういう批判を浴びせる人を「反本質主義」の陣営に与すると見ることもあるようです)や、「お前の事実はそうなんだろう、お前の中ではな。俺のと違うからって文句いうなよ」(政治的な局面では一部のオルタナティヴな右派が信奉することが多いようです)と言う人がすごーく増えました。こうして、すべてが懐疑と恣意にいろどられていきます。「事実」はどんどん難問になっていくわけです。こういう難問のことを、衒学的ジャーゴンで「アポリア」と呼ぶことがあります。

 このブームのゆくえがどうなるのか、私は非常に興味深く、また細心の注意をもって見守りたいと思っていますし、自分なりになんとかこれになんとか向き合いたいわけです。というわけで、いま私はテリー・イーグルトンの『文学という出来事』という本を読んでいます。

(中略)なぜなら概念とは、わたしたちが事物について理解している何かではなく、事物についてのわたしたちの理解のしかたそのものヽヽヽヽなのだ。なるほど、まちがった理解のしかたというものはあるかもしれないが、これは概念が事物とわたしたちの間に割って入るからではなく、また概念が事物の派生版にすぎないからということでもない。こうした誤解の背後にあるのは、概念を頭のなかにある画像とみなすあてにならないメタファーである。この罠から逃れようとして、メタファーとは事実を受動的に反映するのではなく積極的に事物を構築するのだと主張したところでだめである。あまたの認識論的構築主義の背後には概念をものごとのやり方としてではなく擬似事物とみる物象化された観点がある。そのため、たとえばアルチュセールの弟子たち(ちなみにわたし自身も、ある一時期、曖昧ながらも弟子たちのひとりと目されてもしかたのないところがあったが)は、世界における現実の事物と、事物の概念的構築とをうやうやしく対比し、後者だけが、わたしたちが事物にとって知りえる唯一のものとよく主張したものだった。ここにあるのは「概念」という語の文法をめぐる誤謬であり、この誤謬から文化理論はまだ完全に脱却できていない。

Eagleton, Terry (2012). The Event of Literature. Yale University Press.(テリー・イーグルトン 大橋洋一(訳)(2018).文学という出来事 平凡社)p.66

  ひとつつけ加えるのなら、私は世界を解釈することではなく、世界を変えることの方にも大きな関心を寄せているのです。

 

あーつかれた。ブログの更新つづけられるのかな…